Masayuki Miyamoto Photography
写真家 宮本昌幸オフィシャルサイト


エッセイ

 日々フィールドに一人たたずむと、時にとても貴重なシーンに出会うことがあります。このコーナーではそれらの経験の中からわたしの中で特に心に刻まれた光景をエッセイとしてまとめました。
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Story1 「鳥の家族と絆」


夕焼けとオオハクチョウ

 秋のとある畑の傍で、ハクガンという国内では珍しい鳥を撮影していました。彼らが降り立った畑にはオオハクチョウもたくさん舞い降り、落穂をせっせと食べては時々隣人同士で争っています。その中に親2羽、仔1羽の家族と思われるハクチョウがいました。仔の方は地面にうずくまり時々羽をバタつかせる姿をみせつつも特に立ち上がって移動する仕草がありませんが、2羽の親はせっせと落穂拾いをしています。

 次第に辺りの明るさがなくなりはじめると、周りにいた多くのハクチョウ達は畑の地面を蹴り上げて力強く助走をつけながら、1羽また1羽、そして家族単位やそれらが集まりより大きなグループとなって空へと舞い上がっていきます。彼らはキツネなどの天敵から身を守ることができる水辺のねぐらへと向かうのです。ハクチョウのような大きな鳥は飛行機と同じように助走をかけないと空へはなかなか舞い上がれません。羽をはばたかせたところで真上には上がることは出来ないのです。
 そのような日没迫る状況で繰り返される景色の中、僕の近くにいた例の3羽の家族もそれにならって移動をしたい様子でした。ハクチョウは飛び立つ際に独特の声を出し、首を縦に振ってお互いの意思疎通を行います。この一連の儀式を繰り返すこの家族にあって座り込んだ仔は声を出し首を振るものの立ち上がろうとしません。いや、出来ないようでした。
両翼を支えにして立ち上がろうとして見えた片方の足先は、全く力が入らずダランと垂れ下がり自分の体を支えることが出来ないように僕には見えました。 
 親の2羽はそれでも声の掛け合いを繰り返し、そしてついに勢いよく助走を始めました。彼らが5mほど加速した時、仔もそれにならって必死に羽をバタつかせますが、 やはり身体を浮き上がらせることはできず倒れこむようにしてすぐ地面へと座り込んでしまいました。 そしてその瞬間、その様子を後ろ目で確認した親鳥の2羽は急ブレーキをかけると同時に飛び立つのやめ、また大きく声を上げながら仔の周りへと戻ったのです。それからは時間を置きながら3度ほど同じことを繰り返しました。その時間は約1時間。ですが、仔はやはり飛び立つことが出来ませんでした。
 どんよりと曇り空だったこの日は、夕刻になると急激にあたりの明るさがなくなってきます。畑に降りて落ち穂を食べていた他の仲間達は、その間にほとんどがねぐらへと飛んで行ってしまいました。しかしながら、親2羽は常に仔に声をかけその場を離れようとはしません。
 再び親鳥が声をかけはじめ首を振ります。再度チャレンジするのです。いくら体の大きいハクチョウといえど畑のど真ん中で夜を過ごせば、キツネの格好の餌食となってしまうので、親鳥としても自分の身を守らねばなりません。僕にとっては言葉や生活様式が通じないハクチョウの気持ちを汲み取ることは出来ませんが、たぶん親鳥は飛ぶことが出来ない仔と共に危険な畑で夜を迎えるよりも、自らの身を守るために飛び立つことを選んだ、そんな様子にも感じれました。2羽のオオハクチョウは、より一層大きな声をあげて助走を始めました。仔もそれを察したのか、それまでになく一所懸命羽をばたつかせ、倒れこみそうになりながらも幾度も試みて出来なかった滑走路をひた走り揚力を得る、そのようなまさに助走としての形になりました。そして身体を浮かばせることに成功したのです。 
 ところが、両足で力強く地面を蹴ってしっかりとした助走が出来なかったために十分な高度をかせげず潅木にぶつかり墜落してしまいます。2羽の親鳥はメスと思われる1羽はすぐに真横へ着陸、オスは大きく弧を描くように仔の上空をグルリと低空旋回しながら声をかけます。そして幸い秋まき小麦の畑に墜落していた仔ハクチョウは、柔らかい地面と障害物の無い幸運な状況を得て、再び羽ばたき始め空中へと舞い上がりました。今度こそ3羽してねぐらの川面へと飛翔し、やがて遠方へと見えなくなりました。
 脚がダメになった幼鳥に明日が無事訪れるのかはわかりません。夜を越せたとしても、再び川面を蹴る力があるのか、畑に降り立っても歩きながら採餌ができるのか、正直可能性は低いのかもしれません。しかし、中には羽が折れこの北海道の地で夏を過ごさなくてはならなくなった個体が、しっかりと1羽で生き抜いていることを見ることもあります。翼の折れたメスに恋して、オスは北へ渡るのをやめこの地で繁殖まで成功させたペアもありますそれが云ってみれば自然の掟と奇跡なのです。 
 ただ僕は考えました。もしあのラストチャンスと決めたように飛び出した親鳥が、仮にそれまでと同じように飛び立つことが出来ない自分の仔を見た時はどういう対応をしていたのでしょうか。そのまま自分の身を危険に晒してまで畑の中で共に過ごしたのでしょうか。それとも。。。
 よく動物に感情はない、そういう見方の会話を聞くことがあります。実際に僕自身がフィールドにいて体験する様々なシーンでは、圧倒的に感情など存在しないかのような場面に出会います。動物に感情があるのか、はたまた無いのか、そんな一生答えが見つからなさそうなことを追求することはもしかしたら無意味なことなのかもしれませんが、興味深いフィールドでの経験でした。

 

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